近藤勇や土方歳三ほど有名ではありませんが、試衛館時代から近藤を支え続けてきた人物の一人が井上源三郎です。寡黙な方だったそうですが、「源さん」の愛称そのままに多くの隊士から慕われていたといいます。
井上が生まれ育った多摩地方は、江戸時代を通して幕府の直轄領だったことから佐幕意識が非常に強かったところです。普段は農民でありながら、幕府に一大事があれば一緒に戦う心構えを持つ「八王子千人同心」と呼ばれる人たちがいました。
井上も当然、そうした強い意志を持って剣術を学び、やがて新選組の一員として幕府を守る立場になっていきます。鳥羽・伏見の戦いで壮絶な死を遂げた井上は、他の戦死者とともに京都競馬場近くの千両松に葬られました。
源三郎の兄である井上松五郎の子孫の方が、大河ドラマを機に、日野市に「井上源三郎資料館」を開設され、私も見学させてもらいました。子孫の方から直接お話を聞き、新選組や八王子千人同心を誇りに思う熱い気持ちが伝わってきました。