昭和の文豪・太宰治が逗留して小説を執筆した旅館が、山梨県甲府市の湯村温泉にあります。市街地の中にある温泉地で近代的なホテルも多く、昔ながらの湯の町情緒はあまり感じられませんが、その旅館は昭和の雰囲気が漂っていました。
2002年12月の山梨へのミニ旅でこの旅館に宿泊しました。当時、柄にもなく長編のエッセーを執筆しており、落ち着いた静かな環境で構想を練るため、太宰にあやかって食事付きの旅館を取ってみたのです。
旅館の仲居さんに太宰が逗留した部屋を案内していただき、その一角にある資料室も見せてもらいました。太宰の妻が山梨県出身で、彼も甲府市に住んでいたことがあるそうですが、当時旅館の者は彼が小説家だとは知らなかったといいます。
少し早い時間にチェックインしたので、夕食までは構想作りができましたが、夕食で地酒を飲んでしまったところであえなく終了(笑)。「そういえば太宰治も酒好きだったよなあ」と自分に言い聞かせ、旅館でのくつろいだ一夜を過ごしました。